フクロウの声
髪を高く結い上げることに違和感はないものの、
初めて履く袴には違和感があった。
 
境内を進むと、隊士らしき男たちの姿があちらこちらに見える。
皆、屈強そうな体つきの男たちである。

前髪を眉のあたりで揃えているマオリの姿は
元服前の子供のように映っていることだろう。
 
その視線にマオリはうつむいた。

これからどうなるのか、
有松に来た時よりも不安がたちこめていた。
 
この建物の中に土方がおり、沖田がいるのだ。

「おい、ガキがなんの用だ。」
 
一人の隊士らしき男がマオリを呼び止めた。
 
鍛え上げた筋肉が透けてみえるような、
がっしりとした体つきの男は、
飛び跳ねる毛先を撫で付けるように無造作に結わえていた。

「あの・・・土方さんはいらっしゃいますか?」
 
マオリは怖気づきながらも男にたずねた。

「おいおい、聞いてんのはこっちだぜ。」
 
男は首をかしげた。
おまけに声が大きい。

境内の隊士たちが何事かと視線を向ける。
マオリはますます不安がこみ上げ、黙り込んだ。

< 115 / 206 >

この作品をシェア

pagetop