フクロウの声
「君は選んだことなど一度もない、と言ったね。」
沖田はマオリに向いた。
日差しが影をつくり、
消えてしまいそうな沖田の面差しを浮かび上がらせた。
「私は、平助は選んだのだから、
きっとあの世で私を迎えてくれると思う。」
沖田は自分が殺した男についてそう言って、歯をみせて笑った。
「私も選んだんだ。
死ぬまで新撰組のために、近藤さんと土方さんのために戦うと。」
沖田の目が光が戻った。
「土方さんが鬼ならば、私は修羅になる。」
修羅になる、と言った沖田は刀を握った時と同じ表情になった。
しかし、その途端に咳き込み、体を二つに折った。
「お薬を。」
マオリはごつごつと背骨が触れる背中をさすりながら薬を飲ませた。
鬼になったり、病人になったり、
まるで一つの皮袋の中に違う生き物が入っているようである。
マオリは、腹のそこから何かうごめくのを感じた。
それは、今までマオリが考えることがないように
心の奥底に眠らせていたものだった。
痩せた沖田の背中が温かかった。
沖田はマオリに向いた。
日差しが影をつくり、
消えてしまいそうな沖田の面差しを浮かび上がらせた。
「私は、平助は選んだのだから、
きっとあの世で私を迎えてくれると思う。」
沖田は自分が殺した男についてそう言って、歯をみせて笑った。
「私も選んだんだ。
死ぬまで新撰組のために、近藤さんと土方さんのために戦うと。」
沖田の目が光が戻った。
「土方さんが鬼ならば、私は修羅になる。」
修羅になる、と言った沖田は刀を握った時と同じ表情になった。
しかし、その途端に咳き込み、体を二つに折った。
「お薬を。」
マオリはごつごつと背骨が触れる背中をさすりながら薬を飲ませた。
鬼になったり、病人になったり、
まるで一つの皮袋の中に違う生き物が入っているようである。
マオリは、腹のそこから何かうごめくのを感じた。
それは、今までマオリが考えることがないように
心の奥底に眠らせていたものだった。
痩せた沖田の背中が温かかった。