フクロウの声
「伊東先生の恨み、覚悟!」
 
男たちの中の一人が、マオリめがけて突進してきた。
 
マオリは刀でその一撃を払いのけ、
視界の隅に寝巻き姿の沖田が刀を持って出てきているのをとらえた。

「沖田総司はここにはいない。先だって、伏見に発った。」
 
沖田の姿が隠れるよう、マオリは体制を変えた。
 
存分に刀の振るえない沖田と、
孝子をかばっての戦闘は明らかにマオリにとって不利であった。

二人を同時に相手にしたとしても、
残る一人に孝子を人質にとられる可能性がある。

マオリは、おれの名を呼んだ。
 
それは久々のことで、
マオリの髪の中に隠れて眠っていたおれはすぐに目覚めた。
 
力が欲しい。
 
そう必死に願うマオリの声が聞こえた。
 
おれは大きく伸びをするように羽根を広げた。
そして、威嚇するように啼いた。

「きええええっっ!」
 
マオリは相手を制するような気合の声をあげた。
 
少年とも少女とも見分けのつかぬ剣士に、
男たちは一歩引いた。
 
今だ、マオリ。
 
縁側から庭へ飛び降りたさまはまさに飛行のようだった。

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