フクロウの声
二、死神
おれとマオリが村を出て五日になる。

生まれて初めて村から出たマオリに、
もちろん行くあてなどなかった。

道祖神に供えられた干からびた供物を食べてマオリは飢えをしのいだが、
神社で体を洗っただけで、
粗末な麻の着物は煤けたままところどころ破けていた。

おれはマオリは誘導して、死のにおいのする町を目指した。
西のほうの古い町。
 
できれば人目につくことはさけたかったが、
道祖神の供物だけではマオリの体は持ちそうになかった。 

はあはあと荒い息が肩の上下を見ているだけでもわかる。
 
街道を避けて薄暗い森の中の獣道を進む。

山育ちのマオリといえど、木の根に足をとられ、
茨が刺さるたびに土にまみれた裸足の白い足首に血が滲んだ。
 
おれが宿ったことで透けるような白い肌になったマオリの目は虚ろで、
このままではおれも居心地が悪い。

どこかでマオリを休ませる必要があった。

マオリ、この先に宿場がある。
街道に出てそこへ向かえ。

おれの呼びかけにマオリからの返事はなかった。

かさかさと乾いた唇から荒い息が漏れる。
おれがいなければ、とうにのたれ死んでいるだろう。
 
哀れな少女を救ったことへの満足感が湧き上がる。
同時におれのものだという奇妙な感覚をおぼえた。

おれの指示通り素直に宿場へと向かって山を下りていくマオリが
かわいらしくさえ思える。
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