フクロウの声
「江戸で有名な道場破りなんだってさ。」
 
野次馬がささやきあう声が聞こえる。

マオリは人だかりに静かに近づいた。
異様な身なりに、すっと野次馬がマオリから距離をとる。

「おれだ!おれがやろう!」
 
人だかりから一人の男が名乗りをあげた。

腰に刀を差した浪人風の男だった。

大男よりも一回り小さいが、堂々とした振る舞いから、
彼もなかなか腕に覚えのある男とみえる。

野次馬たちはどよめきながら揶揄する声をあげ、
肩で風を切って進み出る男が通る道をあけた。

「ようし!来い!」

大男が刀を抜いた。

「さあ、賭けるものはおらんかね?」
 
呼び込みの男が手を振った。
人々はどよめきたつ。

「おれは大男に賭けるぞ!」
 
野次馬の中から声があがった。

「いや、おれは挑戦者のほうに!」
 
次々と賭けに参加する声があがった。

「さあ、もうおらんかね?」
 
呼び込みの男が確認し、大男と浪人の勝負が始まった。

二人が構えると、
やんやと騒いでいた野次馬たちも息を飲んで見守った。
 
じりじりと大男が詰め寄る。
浪人は間合いを保ちながら刀に手をかけた。

「ィヤァッッ!」
 
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