フクロウの声
浪人のあげた声と共に刀がぶつかり合う音が響いた。

浪人の抜いた刀を大男が薙ぎ払って、
頭上高く振り上げた刀をおろした。
 
浪人の肩すれすれで大男は刀を止めた。
浪人の手からは刀が落とされて、地面に転がっている。
勝負あった。

「この勝負、つきましてございまする!」
 
呼び込みの男が高らかに大男の勝利を宣言し、
賭けた金を回収していった。
 
大男はにやにやと笑って、
浪人が悔しそうに刀を拾って足速に去っていくのを見ている。
 
浪人がマオリの横を抜けた。
 
マオリはまっすぐに大男を見つめていた。
大男もみすぼらしい格好をした娘の視線に気づいた。

マオリ、あいつを倒して金を手に入れよう。

おれはマオリに呼びかけた。
返事はない。
かすかに震えている。

怯えることはない。
おまえの体を借りておれが戦う。
金があれば宿に泊まれるだろう。
飯も食える。
風呂にも入れる。
あたたかい布団で眠ることができるぞ。
 
マオリがごくりとつばを飲み込んだ。
ぐう、と腹が鳴った。

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