フクロウの声
マオリの空腹が限界に達していることなど百も承知である。

そう、もう生きるに方法は限られている。
もとよりマオリに選択肢などないに等しいのだ。

「さてさて、他に挑戦するものはおらんかね?」
 
再び呼び込みの男が声をあげる。

「今のを見て挑むやつがいるかよ!」
 
野次馬が言う。
そうだ、そうだと周りの旅人たちもうなずく。
 
一歩、マオリは踏み出した。
マオリの足が震えているのがわかる。
 
人だかりの中をマオリは進んだ。
おずおずと手をあげて自分の存在を知らせる。

「おらが・・・。」
 
マオリは消え入るような弱々しい声で告げた。
みすぼらしい格好のひ弱そうな娘の出現に人々は笑った。

「やめときな、娘さん。命が惜しくないのかい。」
 
近くにいた男がマオリに触れようとした。
おれはそれをくちばしでつついた。

「って!」
 
男は慌てて手を引っ込めた。

「なんだぁ?今の。」
マオリは中央まで進み出て、おれが授けた白い刀を抜いた。

マオリの体には刀が大きく見える。
刀の扱い方を知らないマオリが不恰好に刀を構えた。

「おいおい。怪我するぜ、やめときな。」

野次が飛ぶ。
誰の目にもマオリが刀を抜いたことのない娘だとわかる。

< 36 / 206 >

この作品をシェア

pagetop