フクロウの声
「娘さん、本当にやるのかい?」
 
呼び込みの男がマオリを心配そうに覗き込む。
マオリはそれを無視して真っ直ぐに大男を見据えた。

その目にわずかばかり金色の光が宿り始める。

「やるというなら、お相手しよう。」
 
大男も刀を構えた。

「こりゃあいい!おれは娘に賭けるぞ!」

「そんじゃ、おれも!」

「おれもだ!」
 
輪の中にいた男がマオリに賭けた。
すると次々にマオリに賭ける声があがった。

意外にも負けるとわかる賭けに参加するのが
おもしろいと踏んだらしい旅人が多く、
マオリに賭けた者以上に大男に賭けるものの声があがった。

これでマオリが勝てば賞金の一両の他に相当な金が手に入る。
 
刀の柄を握り締めたマオリの体の中で、
おれは体勢を整えた。

獲物を狩る時と同じように、鋭い眼光で大男を見定めた。
 
同時にマオリの中におれの力が広がっていく。

まだ明るいので全力でというわけにはいかないが、
この程度の男を倒すには十分すぎる。
 
マオリはおれと同じ目で大男をにらんだ。
鋭い眼光は金色に光り大男を威圧した。

茨で傷ついた血の乾いた裸足が地を踏みしめる。

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