フクロウの声
「ヤァァァッ!」
 
マオリから放たれる異様なおれの殺気に耐えかねて、
大男が一気に間合いを詰めて上段から斬りかかってきた。
 
おれは翼を大きく広げて、低く飛んだ。
 
大男の一撃をひらりと交わし、
マオリの裸足が地を掴んだ。

その瞬間蹴り上げて反転しながら、
大男の背後をとらえる。
 
マオリの体におれの力がみなぎっていく。

空っぽのマオリにおれが行き渡る。
 
声をあげることもなく、
マオリは飛び上がって刀の柄を大男の後頭部に向けて突いた。
 
人間の目にはさぞ一瞬の出来事に映ったであろう。
 
大男はゆっくりと倒れた。

受身をとることもなく意識を失った大男は
顔面から地面に打ちつけ、
鈍い音が振動と共に広がった。
 
着地しながらよろけて地面に手をついたマオリは、
信じられないという表情で倒れた大男を見ていた。
肩で息をする。

空腹のままおれが中で暴れまわったのだから、
マオリの体にも相当の負担がかかったはずだ。
 
あまりにも一瞬で勝負がついたたため、
野次馬たちはあっけにとられていた。

< 38 / 206 >

この作品をシェア

pagetop