フクロウの声
弟の顔は赤い。
マオリは夏の太陽でほてってしまったのだろうと、
汗ばんだ弟の額に手をあてた。

ぐぅ、と苦しそうな声を漏らす。
額は思わず手を引っ込めてしまうほど熱い。

マオリはこれはただごとではない、と
直感的に思い、眉を寄せた。

「どうだべ。」

弟を心配した父が汗を拭きながらマオリと弟の元へ来た。

「おかしい。これ熱だ。」

マオリは泣きそうな顔で父を見上げた。

「お日さんにやられたでねか。」

父はしゃがみこんで、びっしょりと汗をかいた弟の額を触った。

「熱いんだ。」

マオリの言葉に父もうなずく。

「あ、おとう・・・。」

マオリの声は凍りついた。
げほげほと咳き込んだ弟は、朝に食べた薄い粥を吐いた。

マオリが慌てて弟を抱き起こすと、
下痢でぐっしょりと濡れた弟のおしめから垂れた汚物が
マオリの腕を伝った。

マオリは父と顔を見合わせた。
父は嫌な予感を表情に浮かべたまま固まった。
それは鏡のようにマオリを映し出していた。

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