フクロウの声
おれはマオリから少し離れて、
そばに生えていた木の枝にとまって男を観察した。
 
まず間違いなく、男は腕が立つ。

並大抵のものではないだろう。
いくつもの死線をくぐり抜け、
命を賭して刀を抜くことを厭わない、
そうでなければあの蛇のような視線を放つことはできない。

なぜ、人間の男がこれほどまでの
鬼のような気配を漂わせることができるのか。
まるでこのおれと同類かと思わせる。

おれは注意深く様子を見守っていた。

「放せ。」
 
マオリは低く言い、男をにらんだ。

「放せ、放せ!」

マオリは叫ぶように言い放つ。
力なく開いていた手を握り、力をこめ男の手を振りほどいた。
 
細い腕の娘であるマオリがあまりの力で振りほどいたため、
男は驚いたようだった。
 
男から解放されたマオリは素早く立ち上がり刀を拾った。
 
刀を再び手にしたマオリは切っ先を男に向けた。

「邪魔をするな。」
 
おれが中から力を加えずとも、マオリは刀を構えた。

両膝を曲げて低く構える姿はフクロウそのものにすら見えた。

マオリが男を鋭くにらみつけると、
その目は金色に輝きを帯びる。

「俺と斬り合おうというのか。」

男は焦るふうでもなくゆっくりと立ち上がった。

「あんたを殺して死ぬ。」

マオリは男に言った。
 
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