フクロウの声
男は黙って刀を抜いた。

ずっしりとした刀の拵えは、
この男の強さそのものを表している。

赤みがかった柄はずいぶん血を吸っているのだろう。
 
マオリが地を蹴って飛び出した。
真っ直ぐ男の喉もとを狙って飛び込んでいく。
 
常人離れしたマオリの突きに動じることなく、
男は真正面からマオリの刀を受けた。
 
火花が散って、
金属がぶつかりあう音が夜の森に反響する。

その瞬間だけ、周りが照らされるほどの閃光が瞬く。
 
マオリは一撃を跳ね返されて後退したが、
音もなく踏みとどまるとすぐにまた男に向かって飛び込んでいく。
 
またも剣閃が散る。

マオリは後退せずに下段から薙ぎ払おうとした。
男はするりとマオリを交わすと後ろから刀を振り上げた。
 
マオリはすぐさま転がって反転し、それを受ける。
 
しかし、男の一振りは重かった。
マオリは受け止めきれずに倒れた。
 
男は倒れたマオリの顔のすぐ横、
頬に刀が当たるほどの位置で刀を突く。

勝負はついた。
 
実に瞬間の出来事であった。
 
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