フクロウの声
マオリは夜襲を斬り伏せた一件で
血まみれになった着物を捨て、
土方についていた隊士が用意した着物に着替えてはいたが、
足元は裸足に擦り切れたわらじをつっかけただけだった。
 
土まみれの汚い足であることは慣れているが、
そのまま磨き上げられた板張りの屋敷にあがるのは気が引けた。

「どうした。早く来い。」
 
土方はなかなか動かないマオリに催促する。

場違いなところに来てしまった、
とマオリが後悔していることも知らずに。

「水桶を用意こしらえしまひょ。」
 
おかみはマオリが足の指をもぞもぞと動かしている様子に気づいて
奉公人を呼んだ。

「ああ、すまない。おかみ。」

そこでやっと土方はマオリが動かない理由に気づいたようで、
おかみに申し訳なさそうに笑ってみせた。

おれが見てもそれは、
なかなかの色男であると感じさせる笑みであった。

「おなごはんやもんなあ。」
 
おかみはふくふくとした頬をほころばせた。
午後の太陽のような女だ。
そこにいるだけで温かくなる。
 
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