フクロウの声
マオリたちの家族の他にも
少し離れたところで野良仕事をする人たちがいる。

マオリが口を開こうとすると、父が首を振った。
言うでねえ、青くなった唇が震えていた。
冷えた汗が一筋、父の黒い首を伝う。

「帰えってろ。」

父が低い声で言った。

マオリは今にもこみ上げてくる不安が
涙になってあふれ出しそうになるのをこらえて
何度もうなずき、弟を抱えて立ち上がった。
汁のような汚物がマオリの腕を伝った。

どうすんべ、どうすんべ、と
マオリは心のうちで叫びながら家へ戻った。

腕の中の弟はぐったりとして息が荒い。
焼いた石のように小さな体は発熱している。

「おばば・・・!」

マオリは家に飛び込むと祖母を呼んだ。
上の弟は外に出ているようだった。

「おばば、栄治が、栄治が・・・。」

祖母は立ち上がって土間で泣いているマオリの傍へ来た。

「どうしたんだべ。」

祖母はマオリの腕の中でぐったりしている弟を見とめると、
皴の刻まれた顔を強張らせた。

つーっと、マオリの腕を汚物が垂れていく。

「マオリ、誰にも見られなんだか。」

マオリの手から弟を抱き上げると、
祖母は素早く汚れた着物を脱がせた。

< 6 / 206 >

この作品をシェア

pagetop