フクロウの声
村を追われ、誰からも必要とされなくなったマオリは、
生きる意味を失った。
有松で働いている時、マオリは幸せだった。
あくせくと右へ左へ動いている時にはすべてを忘れられる。
そして、有松を薬売りに扮した山崎が訪れた日は、
白い着物に白い刀を差して、マオリは夜の京の町へ消えていった。
それでも、マオリは自分が後ろめたい仕事をして不幸だとは、
微塵も思うことがなかった。
マオリはおれの力を使いこなすようになっていた。
身軽さをいかした身のこなし。
ふわりと高いところに飛び乗ったり、
一瞬で相手の間合いへ入り込む素早さで相手を翻弄する。
それほどの相手でなければ、
おれが力を貸す必要もなかった。
おれはマオリが飛び回るたびに上がる血飛沫を見て楽しんでいた。
ある夜、おれは油断した。
マオリは致命的な傷を与えてその場を離れようとした。
おれは標的がこと切れる瞬間を間近で見たくて、
マオリの肩から離れた。
その瞬間、最後の力を振り絞って、
標的だった男がマオリに斬りかかった。
おれがマオリから離れなければ避けられたものを、
マオリは避けきれずに腕に刀を受けた。
命に関わる傷ではないし、
夜が明ければおれの力で治ってしまうだろうが、
戻ったマオリの傷を見ておかみは青くなった。
「早うこっちへ・・・。」
おかみはマオリを隠すように、
誰も使っていない部屋へマオリを通すと、
水桶やらさらしやらを持って戻ってきた。
生きる意味を失った。
有松で働いている時、マオリは幸せだった。
あくせくと右へ左へ動いている時にはすべてを忘れられる。
そして、有松を薬売りに扮した山崎が訪れた日は、
白い着物に白い刀を差して、マオリは夜の京の町へ消えていった。
それでも、マオリは自分が後ろめたい仕事をして不幸だとは、
微塵も思うことがなかった。
マオリはおれの力を使いこなすようになっていた。
身軽さをいかした身のこなし。
ふわりと高いところに飛び乗ったり、
一瞬で相手の間合いへ入り込む素早さで相手を翻弄する。
それほどの相手でなければ、
おれが力を貸す必要もなかった。
おれはマオリが飛び回るたびに上がる血飛沫を見て楽しんでいた。
ある夜、おれは油断した。
マオリは致命的な傷を与えてその場を離れようとした。
おれは標的がこと切れる瞬間を間近で見たくて、
マオリの肩から離れた。
その瞬間、最後の力を振り絞って、
標的だった男がマオリに斬りかかった。
おれがマオリから離れなければ避けられたものを、
マオリは避けきれずに腕に刀を受けた。
命に関わる傷ではないし、
夜が明ければおれの力で治ってしまうだろうが、
戻ったマオリの傷を見ておかみは青くなった。
「早うこっちへ・・・。」
おかみはマオリを隠すように、
誰も使っていない部屋へマオリを通すと、
水桶やらさらしやらを持って戻ってきた。