フクロウの声
「山崎さん。早く帰ったほうがいいようです。」
 
マオリは注意深く、
足音が近づいてくる方向を見据えながら数歩下がった。

「さっき斬ったやつらの仲間かも・・・。」
 
暗闇に複数の提灯の灯かりが見て取れる。

「面倒やな。ずらかるか。」
 
山崎は汚れたてぬぐいをかぶりなおし、
立ち去ろうとした。

「四方に散りました。どうしますか。」
 
マオリはおれの伝えた感覚を使い、
敵の位置を探る。

「へえ、千里眼というわけか。すごいなあ。」
 
沖田が感心して声をあげる。
まったく緊張感の感じられないその声にマオリは戸惑った。

「来ますよ。戦えますか?」
 
マオリは沖田の調子に焦りながらたずねた。

「じゃあ、今度は私がお手並み披露としますか。」
 
沖田は両手をひらひらと振りながら
川に沿った三方の道の一方へ歩みを進めた。

それは、分散した敵が一番多く人数を割いている方向だった。
 
すぐそばの物陰まで来て潜んでいるのが感じられる。

マオリは沖田に背を向けて、
闇から向かってくる攻撃にそなえた。
 
山崎も隠していた刀を抜いた。

三人は互いに背を合わせる格好となった。

< 84 / 206 >

この作品をシェア

pagetop