フクロウの声
「白い辻斬りというのはおまえか。」
 
闇から野太い声が聞こえた。
マオリは黙ってつばを飲み込んだ。

「いかにも。」
 
代わりに沖田が返す。

余計なことを、
とマオリは背の後ろにいる沖田を苦々しく思う。

「仲間を斬ったのもおまえだな。許せぬ!」
 
他の男が声をあげ、刀を抜く。
白い光がぬらっと存在を露わにした。
 
奇声と共に向かってくる。

マオリ、沖田、山崎はそれぞれ同時に飛び出した。
 
マオリに向かってくるのは二人。
共に浪士のようだと格好から想像する。

京には今、
さまざまな土地から人間たちが集まってきている。
長い時代が終わりを迎えようとしている。

新しい時代の到来の予感に思い上がった者たちが頭に血をのぼらせて、
この町で刀を振るっているのだ。
 
我こそは、と思うものたちを斬り伏せ、
空に上っていく魂を見るのはたまらない。

時折、いくつか頂戴した。
おかげでおれはかつて自由に飛び回っていた頃以上に
思い通りに動くことができる。

男の一太刀をマオリは弾いた。

刀を握りたての頃は、力負けし、
おれが力を出す前に命を獲られそうになることもしばしばあったが、
今のマオリは力の殺し方も知っている。
剛だけが取り柄の者は歯も立たない。
 
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