フクロウの声
どこかでフクロウの鳴く声がする。
ホウホウ、ホウホウと不気味な声だ。

「お迎えかもしれねえ。」

いつのまにか眠ってしまった上の弟の傍から祖母が呟いた。

「裏山の神社のフクロウが来たかもしんねえ。」

「フクロウ?」

マオリは祖母の強張った顔を見つめた。

「フクロウは死を連れてくる。」

「おかあ。」

祖母をたしなめるように父がにらんだ。

昨日までぷっくりと赤子の時から変わらない、
柔らかい頬をしていた弟が、
今マオリが触れるとカサカサと紙のように乾いている。

マオリの流した涙がぽたりと落ちる。
乾いた弟の肌に吸い込まれることもなく、つっと落ちた。
夜が明ける前に弟は死んだ。

体中の水分が抜けて、
藁のように軽くなった弟をかき抱いてマオリは泣いた。
弟は白くしおれていた。

上の弟が泣いているマオリの傍らにちょこんと座り、
しくしくと伝う涙を小さな手で擦っている。

「村の者に知られるでねえぞ。」

「ああ、わかっとる。」

祖母の言葉に不機嫌そうに返事をした父が土間におりた。

上の弟以外は一睡もしていない。
父の目も疲れてくぼんでいた。
弟の亡骸にすがるマオリから、父は弟を取り上げた。

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