フクロウの声
なぜ、沖田にだけフクロウが見えるのか、
マオリは少しだけわかったような気がした。
 
人を斬るたびにずぶずぶと血の沼に沈んでいく。
マオリも沖田も、同じ沼に半身をうずめている。

しかし、マオリにはその感覚が薄かった。

とても非道いことをしているはずなのに、罪悪感が沸いてこない。
このまま知らぬうちに沼に沈んでいってしまうのかもしれない。

そんな得体の知れない不安が沖田と話していた時にはふと和らいだ。
 
マオリは縁側から冷たい土の庭に、裸足のままおりた。
そのまま迷うことなく進み、
沖田の飛ばした竹とんぼを闇の中から拾い上げた。
 
手の中でころころと転がすと、死んだ弟たちが思い出される。
 
マオリは子守唄を口ずさんだ。その歌でよく弟たちをあやした。
 
びゅっとマオリは竹とんぼを夜の空に飛ばした。
夜目の利くマオリはその行方を目で追った。
 
竹とんぼが力を失って地面に落ちると、
飛ぶように駆けて拾っては飛ばし、また拾いに走っては、
そっと胸に抱いた。
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