フクロウの声
「へえ。」
おかみは恐れるように震えて返事をした。
立ち上がって出て行く姿をマオリは目で追う。
大柄なおかみが少し小さく見える。
なぜだか寂しく思う気持ちがこみ上げてくる。
おかみは手をついて一礼すると、
音もなくゆっくりと障子を閉めた。
その姿を隠していく障子の隙間から、
おかみの視線がマオリに向けられた。
悲しそうに唇を噛み締めている。
マオリが口を開きかけるとおかみはうつむき、
パタンと障子の合わさる音がした。
「マオリ。」
土方の声にマオリは振り返った。
「今夜、仕事を終えたらここへは戻るな。」
マオリは土方を見た。
「なぜですか。」
「有松に危険が及ばないように、だ。
次の人物は斬れば必ず追っ手がつく。」
マオリはつばを飲んだ。
「私はどこへ行けばいいのですか。」
マオリの声が少し弱くなる。
おかみの先ほどの表情がよみがえった。
「おまえは俺たちが預かる。仕事を終えたら北にある神社へ向かえ。
迎えをよこす。」
そう言うと土方は立ち上がった。