君から伝わる
何言ってんのコイツ…。
『お前さ、前に関東の大会で選手として出てたろ?』
『なんで知ってんの?』
『雑誌に載ってた』
あー…。
あれか…。
「今シーズン注目選手」の欄に書かれたんだ…。
『お前、水泳辞めんの?』
『……………。』
頭の中で記憶が甦る。
辛い思い出…。
『辞めるんなら後少しだけ待ってくれ。』
『……なんで?
あんたには関係ないよ。』
『………関係ある。』
一呼吸おいて俊が言う。
『桜井中学の水泳部エースになってくれ。
エースとして、俺ら水泳部を引っ張っていってくれないか。』
『今さら水泳部なんて……。』
『じゃあ1ヵ月だけでいい!!
水泳部に来てくれ。』
『…………私にメリットはあるの?』
『俺がいるだろ?』
そう言った俊の笑顔に不覚にも何か感じてしまった。