馬鹿ですけど何か?
二人で帰り道を歩くのは、少し久しぶりで。
自然と手をつなぐけど、ちょっと恥ずかしくて指は閉じたまま。
「あのさ、蓮。」
2人の腕の分あいた空間を少し詰める。
キスしたいって言ってたけど、実は一緒にいられるだけで充分。
少女漫画に出てくる擬音みたいに、胸がぎゅってするのが心地よくて。
「私、キス、初めて。」
最初も最後も蓮だったらいいのに、って、乙女な事を考える。
「俺も。」
いっつも馬鹿みたいな事言って笑ってる時とは違う蓮の笑顔。
それを見る度に、また好きになって。
「私ね、今すごい乙女になってる。」
ぎゅ、と指が指の間に入ってきて、少し強く握られて、
じわりと薄く手に汗が染みた。
「蓮、手汗。」
わざと言ってみるけど、本当はそれすら心地いい。
「好きだよ。」
「だから知ってるってば。」
誤魔化しの言葉でも、頬は自然と緩む。
「ニヤけてる。楓の負けね。」
追い風が吹いて、背中をそっと押された。
くだらない会話をしていたら、いつの間にか蓮の家についていた。
途中で22世紀のあの扉でもくぐったのかもしれない。