馬鹿ですけど何か?
少し体を離し、蓮を見上げる。
どの角度からみてもやっぱりイケメンくん。
「ね、楓、ちゅーしていい?」
言われて、私は返事をする前に目をつむった。
「ん」
いいよ、とは、わざと言わない。
ちょっと戸惑う蓮を閉じた瞳の向こうに感じて少し笑いそうになる。
外から聞こえる車の音、人の声。
そんなノイズの中でも、蓮の息、鼓動を感じる。
もう、蓮、密着しすぎ。
私のファーストキス。
当たり前みたいに蓮にあげる。
ねえ、蓮、大好き。
でもね、気になる。
右腕に微妙に触れてるもの。
パーカーの中に隠したエロ本ね。
どうせなら元の場所に戻すとか、床に置くとかしてほしかったな。
「まだ?」
私がこれだけいろいろな事考えてた間、蓮の唇はいつまでたっても降りてこなかった。
「や、なんか緊張して…」
女の子かよ、って思ったけど、口には出さなかった。
こちとら軽く覚悟したのに。
ちょっとむかついたからエロ本を引っ張り出して元の場所に戻した。
その時に蓮の体温から逃れて、ざまあみろ、って口の中でささやいた。