馬鹿ですけど何か?



蓮はくっつくのが好き。

私もくっつくのが好き。


「楓さん?」


「なんでしょう蓮さん?」


「もう一回抱きしめていい?」


無視。

したいなら勝手にしてこればいい。

なんだか今は、ちょっと蓮に意地悪がしたい気分なの。


「楓さん?」


……もう、仕方ないな、バカ。

ほんとに私ったら、蓮に甘くて弱い。

相手が私でよかったね、蓮。

いや、蓮の相手が私じゃないなんて、考えたくもないんだけどね。


ぎゅっ、と手を握ってから、蓮の首に手を回す。

そして耳元で、できるだけ小さな声で、


「ちゅーして、蓮。」


こんなこと、女の子から言わせるなんて、男の子失格だよ。

でもね、蓮の鼓動が、ちょっと早くなったのがわかったから、許してあげる。


「楓、こっち向いて。」


そう言われて、腕の力を弱める。

肩を弱く押された後、両頬を両手ではさまれた。

蓮の手、あったかい。


軽く頬をつままれた後、じっと見つめあって、少し笑いあう。

なんだか妙に恥ずかしくなってきた。




< 15 / 18 >

この作品をシェア

pagetop