馬鹿ですけど何か?
蓮はくっつくのが好き。
私もくっつくのが好き。
「楓さん?」
「なんでしょう蓮さん?」
「もう一回抱きしめていい?」
無視。
したいなら勝手にしてこればいい。
なんだか今は、ちょっと蓮に意地悪がしたい気分なの。
「楓さん?」
……もう、仕方ないな、バカ。
ほんとに私ったら、蓮に甘くて弱い。
相手が私でよかったね、蓮。
いや、蓮の相手が私じゃないなんて、考えたくもないんだけどね。
ぎゅっ、と手を握ってから、蓮の首に手を回す。
そして耳元で、できるだけ小さな声で、
「ちゅーして、蓮。」
こんなこと、女の子から言わせるなんて、男の子失格だよ。
でもね、蓮の鼓動が、ちょっと早くなったのがわかったから、許してあげる。
「楓、こっち向いて。」
そう言われて、腕の力を弱める。
肩を弱く押された後、両頬を両手ではさまれた。
蓮の手、あったかい。
軽く頬をつままれた後、じっと見つめあって、少し笑いあう。
なんだか妙に恥ずかしくなってきた。