馬鹿ですけど何か?



ぎゅって目をつむったのと同時に、少しだけ触れた唇。

これが、私の、ファーストキス。


ファーストキスはレモンの味ってやつ。

あれ、嘘だよ。


「……、」


ゆっくり数えて三秒間、私たちは唇を合わせた。

そしてまたゆっくり数えて三秒間、私たちは目を合わせた。


「ふへへ、」


と、蓮が気持ち悪い笑い声を出した。

きっと私はこれから先、ファーストキスを思い出すたびこの笑いを思い出す。


「ありがと、楓。」


一瞬前の笑顔とは違う笑顔になって、蓮は言った。

蓮のその笑顔、大好き。


「ん、」


私もつられて、ヘラリと笑う。


部屋に流れる私の好きなアーティストの優しい歌が、控えめに部屋に響く。

二人の耳に聞こえてるのはきっと、その音と、お互いの呼吸と鼓動。


いつも馬鹿なことばっかしてて、私はそんな時間が大好きで。

でもね、きっと、そんな時間が楽しいのは、蓮のことが好きだから。

…なのもあると思う。


「大好き。」


「俺も。」



こうして、無事、蓮の唇を奪うことに成功した私なのでした。




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