恋猫
淳ノ介が鈴を力強く抱き締めた。
時、止まる。
二人は、時が止まったかと思うほど、長く長く抱擁をした。
(ぱちぱちぱち!)
美化が心の中で両手を打った。
(芝居はここまでだ)
(二人の仲がここまで熱々になれば、後は美化さまの出番。続きは、もっと色っぽく決めてやるからね。鈴、お前の出番もこれで終わりだよ。ご苦労さん)
(こんなにいい思いをさせてやったんだ。思い残す事も無いだろう)
美化の目が鋭く輝いた。
二人は見化の企ても知らずに、長い長い抱擁を続けていた。