恋猫
家康以来の家臣として忠実に仕え続けた由緒ある旗本の楓家には、一人息子の淳ノ介がいた。
本年20歳。
独身。
嫌いの猫好き。
現在、3匹の猫を屋敷内に飼い、その猫たちを淳ノ介は熱愛していた。
その中でも、淳ノ介が一番可愛がっているのが、雌猫の美化(みけ)である。
美化は、生後約1年。
多感な発情期を迎える、いままさにお年頃の雌猫だ。
近所の野良猫たちが、にゃおにゃおご~とやかましい。
美化にちょっかいを出そうと、虎視眈々と狙っている精力絶倫のオス猫たちだ。
美化は容姿端麗。それは、それは、絶世の美猫。
その見目麗しき事、いといと高し。
この辺りのオス猫たちにとって憧れの的的存在だ。