恋猫
それが、それが・・・。
今日初めて会った同じ旗本の気高き武家の娘と、行く事になろうとは、淳乃介は夢にも思わなかった。
嬉しい。いや、恥ずかしい。いやいや、怖い。いやいやいや、行ってみたい。その前に、せめて、見学だけでもしてみたい。
淳ノ介が妄想に浸っていると、
「おいやですか」
篠が淳ノ介の顔を覗いた。
「いやいや、お供します。私も・・・・」
その後の言葉は、恥ずかしくて淳ノ介は、唾と一緒に飲み込んだ。
「淳ノ介さま、それでは参りましょう」
篠は男子の後ろを楚々と歩く気高い女子が嘘のよう。
戦場にいさましく進軍する兵士のように、篠は胸を張って堂々と、淳ノ介の前を歩いて行った。
淳ノ介は、自分の後ろを楚々と歩く篠と、自分の前を堂々と歩く篠が、全く別人のように思えた。