恋猫
「淳ノ介さま」
美化は、思わず憧れの名を呼んだ。
「ああ、淳ノ介さまーーーッ」
「こんなにもあなた様をお慕い申しております」
いつも美化は、自分の部屋に戻ると、うわ言のように淳ノ介を呼び求め、果たせぬ夢に大きな溜息を付いていた。
この屋敷内には、美化のほか、みみ、玉の猫たちが、楓家に飼われていた。
みみは、美化の姉妹の三毛猫。
玉は、エキゾチックな風貌を持つシャム猫のオス。淳ノ介が友人から貰ったイケネコ。美化にぞっこん。ただいま美化に求愛中。
これらが楓家の猫たちだ。