恋猫
 
 「淳ノ介さま」

 美化は、思わず憧れの名を呼んだ。


 「ああ、淳ノ介さまーーーッ」
 「こんなにもあなた様をお慕い申しております」


 いつも美化は、自分の部屋に戻ると、うわ言のように淳ノ介を呼び求め、果たせぬ夢に大きな溜息を付いていた。



 この屋敷内には、美化のほか、みみ、玉の猫たちが、楓家に飼われていた。


 みみは、美化の姉妹の三毛猫。

 玉は、エキゾチックな風貌を持つシャム猫のオス。淳ノ介が友人から貰ったイケネコ。美化にぞっこん。ただいま美化に求愛中。



 これらが楓家の猫たちだ。





< 5 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop