恋猫

 妹のみみは、部屋の隅 いつもの席でこっくり、こっくり。寝ては喰う、喰うては寝るの能無し妹。


 シャム猫の玉は、美化を見るとすぐそばに擦り寄って来て、スキンシップをしたがる。体をどこかしこと押し寄せ密着させるのが、玉は好きだ。


 「おい、近過ぎるんだよ」


 美化がわざと体を離れさせると、決まってにゃおにゃおと、きざなセリフを言いたがる。甘い顔を見せると、すぐ背後を窺って、「いいだろう」って言う顔をするから、油断は禁物。


 「私は尻軽猫じゃないよ。おあいにく様」


 と、言って美化が睨み付けると、玉はこそこそと逃げ出す憎めない奴だ。



 とかく、猫のオスは、あれしか頭にないみたいだ。寝ても覚めても、あれ、あれ、アレ。


 猫のオスは、体全体が欲望の固まりだ。知性のかけらも無い。






< 6 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop