恋猫
「他にする事があるだろう。もっと知性を持て。淳ノ介さまのように。書物に勤しみ、武術を磨き、暇な時は猫と戯れる」
「これぞ、誇り高き生き方。理想の生き方というものだ。私が淳ノ介さまを心からお慕いする所以だ」
美化が、理想の異性像について弁を振るった。
いま、美化に心配の種がひとつある。それは、楓家のひとり息子 淳ノ介さまの見合い話だ。
「何て、余計な事を・・・」
美化は腹立たしくて、腹立たしくて、腹の虫がどうにも治まらない。
「この話を壊したい」
「木っ端微塵に葬りたい」
美化は無い知恵を絞っていろいろ思案するのだが、何せ猫世界の事ではなく、人間世界の事。知恵が到底及ばない。
「どうしたものか」
「ああでもない、こうでもない」
と、言っている内に、見合い話は明日に迫って来た。
「ああ、恐ろしや」
「こうなりゃ、明日本番に実力行使するしかあるまい」
美化の腹が漸く決まった。