一途系、女子
第一章
今日もあたしは
たった1人の君に
一途な恋をしています。
――――――――・・・
「キャーっ!空也君こっち向いてー!」
「やだ、空也君が汗をかいてるわ!早くタオルを持って行ってさしあげないとっ!」
現在、午前7時15分。
朝早くから体育館に響く黄色い歓声。
その数多くの歓声は、たった1人に向けられていて。
空也君を見守る多くの女子は、
何としてでも話すキッカケを
掴んでやる!と言わんばかりに
毎日毎日、こうして朝早くから体育館を訪れる。
・・・そんな光景を、
横のコートで指をくわえて
見ているだけのあたし、水原南乃(mizumoto/nano)
「南乃ーっ!よそ見してると危ないぞ!」
「あ、ごめんごめんっ!」
マネージャーの樹(tatuki)ちゃんの声で我に返ったあたしは再び、朝練に集中。
――季節は、もう5月のなかば。
一生懸命プレーをすれば汗なんて
いくらでも出る季節になっていた。
「南乃、切り返し遅いよ!」
「はいっ、!」
樹ちゃんの鋭い声があたしの気持ちを正しくさせる。
だけど・・・
「キャー!空也君がシュートを決めたわっ!」
「なんてカッコイイのっ・・・!」
空也君がシュートを決めた。
それが一気にあたしを狂わせて。
「っ、・・・空也君、」
チラっと横のコートを見てみると、
嬉しそうに仲間とハイタッチする
空也君の笑顔が視界に入ってきて。
きゅうんと、胸が締め付けられる感覚があたしを襲った。