ヴァージニティー
朝人以外の男を意識できなかった。

朝人以外の男に何も感じなかった。

どうしてもと当人の方から言われ、仕方なくつきあったことはあった。

当人に何も感じなくて、すぐに破局した。

つきあっている彼が自分以外の女と一緒にいるところを見ても、夕子は何も思えなかった。

(へえ、彼はその子と仲良しなんだ)

思えても、たったそれだけだった。

自分には朝人しかいない。

でも、朝人は自分のことを“姉”として見ていないのかも知れない。

“女”なんて、もちろん思っていない。

誰にも言えない思いは、自分の中で抱え込むしか他がなかった。
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