ヴァージニティー
「何をですか?」

夕子はデスクのうえにカバンを置くと、首を傾げた。

「今日新しい人が入ってくるんだって!

しかもイケメン!」

“イケメン”を強調して、少女のように顔を赤らめながらケイコさんが言った。

「へえ、そうなんですか」

冷めたような返事をする夕子とは対照的に、ケイコさんはきゃっきゃっと女子高生みたいにはしゃいでいる。

「いやあ、毎日会社行くのが楽しみだわ!」

ニヤニヤと笑いながら言うケイコさんに、夕子は適当に笑って答えるしか他がなかった。

ケイコさんは何を基準にして“イケメン”と決めて、きゃっきゃっとはしゃいでいるのだろうか?

夕子はそんなことを思った後、ケイコさんに気づかれないように息を吐いた。
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