ヴァージニティー
「デスクのうえに置いてありましたから忘れたと思いまして」

財布を差し出した樋口に、
「ああ、わざわざすみませんでした」

夕子は財布を受け取った。

「いえいえ、社長に聞いたら僕の家と近かったのでついでに」

笑いながらそう言った樋口に、
(近所だったらもう少し早く届けろよ)

朝人は心の中で毒づいた。

こっちはいいとこ邪魔されてムカついてるって言うのに、この男はそれがわからないのだろうか?

「せっかくですから、お茶1杯いかがですか?」

そう言った夕子に、
「はあっ!?」

朝人は思わず声を出した。

夕子と樋口が驚いた顔で自分の方を見てきた。
< 37 / 103 >

この作品をシェア

pagetop