ヴァージニティー
チクリと、朝人の胸と痛んだ。

仕方ない。

今だけは仕方ない。

今の自分は、は夕子の“弟”なんだから。

「じゃあ、お邪魔します」

「どうぞどうぞ」

樋口が家の中に足を踏み入れた。

1杯だけだ。

お茶1杯だけの辛抱だ。

彼がお茶を飲み終わったら、すぐに追い出せばいい。

朝人は自分に何度も言い聞かせると、開けっ放しだったドアを閉めた。

カギとチェーンをかけてしっかりとロックすると、リビングに向かった。
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