ヴァージニティー
夕子はすぐに笑ってごまかすと、
「ちょっと樋口さん、ジョーダンにも程があります」
と、言った。

樋口はニヤリと笑った後、夕子にスマートフォンを見せた。

そこに表示されていたものに、夕子の表情が変わった。

「――えっ…?」

動画だった。

その動画に映し出されていたものは、自分の部屋のベッドで朝人と抱きあっている生々しい光景。

時々、自分の声が入ってくる。

夕子は樋口に視線を向けた。

向けられた樋口は口角をあげると、スマートフォンをスーツの胸ポケットにしまった。

「そう言う、ことでしょう」

そう言った樋口に、夕子は声が出なかった。
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