ヴァージニティー
じゃあ、樋口の要求は一体何だと言うのだろう。

「俺は…」

樋口の手が夕子の肩にさわった。

気持ち悪い!

朝人以外の男にさわられてると思うと、吐き気がした。

樋口はそんな夕子の様子を知ってか知らずか、彼女の耳に唇を寄せた。

「弟さんが愛してるあんたの躰が欲しい」

そうささやいてきた樋口に、
「ッ!」

夕子は視線を向けた。

「あなた…」

自分が一体何を言ってるか、わかってるの?

そう思った夕子の頭の中を呼んだと言うように、
「ああ、嫌ならいいんですよ」

樋口が夕子から離れた。
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