ヴァージニティー
そう言った樋口に、夕子は驚いて耳を疑った。

「用事はないんですよね?

あっても優先しますよね?」

樋口がクスリと笑って、夕子を見つめた。

見つめてくる彼に悔しさを感じながら、
「――わかりました…」

夕子は返事した。

「楽しみにしてますよ、鷹宮さん」

手を振りながら樋口が夕子の前から去って行った。

彼の後ろ姿が見えなくなったその瞬間、夕子は自分の躰を強く抱きしめた。

朝人に何度も、時間をかけて愛された躰。

その躰が…。

夕子はいやいやと言うように首を横に振った。

けど、樋口の要求を断ることができない。
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