ヴァージニティー
「鷹宮さん、こっち見てくださいよ。

人の話を聞く時は人の目を見るもんですよ」

樋口の手が自分に向かって伸びてくる。

「嫌ッ!」

夕子はパシッと、その手を振り払った。

「――弟の、どこがいいんですか?

世間様に公表できない関係なんか続けて」

樋口がやれやれと言うように息を吐いたのがわかった。

「今晩もきてくださいよ」

樋口に言われ、夕子の背筋がゾッと震えた。

「今晩は、俺が目を覚ますまで一緒にいてください」

その行為は、拷問以外何も思い浮かばななかった。
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