ヴァージニティー
今日も、樋口に指定されたホテルの部屋の前にいた。

契約から、今日で2週間目。

口の中が気持ち悪い。

躰が泥のように重い。

それでも、自分は樋口に従わなければいけない。

ここで樋口との契約を守らなかったら。

ここでこの部屋の前から逃げてしまったら。

(……考えたくない)

いつものようにドアをノックしようと、手をあげた時だった。

「――えっ?」

その手をつかまれた。

同時に、驚いた。

(どうしてここにいるの?)

「――あっちゃん…?」

夕子は名前を呼んだ。
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