ヴァージニティー
「あ、ヤバい」

夕子が慌てて椅子から立ちあがった。

「朝飯も戸締まりも俺がやるから」

そう言った朝人に、
「晩ご飯も忘れないでよー?」

夕子は言った。

「はいはい、行ってらっしゃい」

手を振って見送る朝人に、
「行ってきまーす」

夕子は手を振り返すと、玄関へ向かった。

バタンと、ドアの閉まる音が2LDKの部屋に大きく聞こえた。

「――さて」

朝人は椅子から腰をあげると、食べた食器を流しへ持って行った。

自分たちが“イケない”ことをしていることはわかっている。

けど、お互いを“男女”として思う気持ちは止めることができない。
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