文目剣術部【壱】
「やめ!」と言う審判の声を聞きながらタンカで運ばれて行く香賀を呆然と見ていた
面を取った香賀が一瞬だけ俺を見た
「皐月」
確かに香賀の口はそう動いていた
だが俺はその場から動けずカタカタ震える右手から竹刀をするりと落とした
身体中の力が抜け全身の血がサァーと引いていくのが分かった
試合は俺が犯した事故により敗北で3位
準決勝は香賀引き入る時雨中学に決まった
それから俺はその時のトラウマで竹刀が握れなくなり部員に黙って静かに自ら剣道部を去って行った