想い綴り









でも
コイツ…


ちゃんと話せるんじゃん




声…
まともに聞いたの

もしかしたら
今日はじめてかも。





窓際の奥
適当にページをめくる横目に

大きな段ボール抱えて歩く唐沢











「―…あのコレってあっちでいいんですか?…―」








周りが静かだからかな

いつもよりよく聴こえる


細くて小さいけど
透き通るような澄んだ声…










「亜衣ちゃん、いいよ~汚れるし重たいでしょ」


「大丈夫です、こっちの棚ですか?」










…もしかして



コイツが普段ジーンズとトレーナーなのって

これのためとか…?











「いつもありがとう助かる~」












こきたない段ボールを抱えて、すでに全身ホコリまみれ。

だけど
そんなんなっても

目に映るのは
いつも見る唐沢とは違う楽しそな笑顔。













…んだよ

いつもそんな顔してりゃいいのに

そしたら…














……って




「…そしたらなんだっていうんだ俺」











無いだろ
絶対

だって唐沢だよ?





ダサくて暗くて…

色気なんてぜんぜんなくて

俺のタイプとはぜんっぜん正反対の。


なのに










「亜衣ちゃ~ん、これお願いしていい?」


「はい」










嬉しそうな横顔に
ほんの少しはねる胸











「…たまたま珍しいもん見たから…だからだっつ~の」







そう
見慣れないもん見てびっくりしただけ



そう思いながらも
なんだか


ずっと…









目が離せない自分がいた





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