想い綴り

触れる指先









「なぁー、今日の合コンだけどさぁ」









あれから


唐沢に付き合って図書室に顔を出したあの日から


今までの俺がほんの少しだけ変わった気がする











「あの読モ多いっていう桜女子だぜ~?
マジで仲良くなったら…やべ俺、どうしよ~っ」


「大丈夫、なんねぇよ」








講義終了のロビーの片隅


ワイワイと
取り囲む仲間から聞こえるのは

相変わらず、進歩のないこんなネタ。



そりゃ
誰だって、キレイでかわいい子とは

仲良くなりたい
付き合いたい

期待するのは
そんなもんだ



でも







「なぁ、淳也行くだろ?」


「あ~…悪い、俺パス」






でも
最近…そういうの
ぜんぜん気にならない自分がいる










「は?ちょっ、あの桜女子だぞ?次、あるかわかんねぇよ?」


「ん~…」


「あ、…なんだよ、またジミマメか?別に学内じゃないし、平気じゃん」


「いや、そうなんだけど…」









ついこの前までは
唐沢兄が怖いからって、

そんな理由で行かないこともあったけど

でも
今は






「あ、悪りぃ、俺行くわ」


「ちょっ?、淳也っ」







今は
そんなことより
ずっと

気になるものが
ひとつ。


それは…











「唐沢っ」










学生溢れるロビーで隅っこばっかり歩く小さなカゲ。


相変わらず
こ汚いジーンズにサイズフリーないつもパーカー


呼び止める声に慌てながら、俺に気が付くと

そのまま
足を止める唐沢。










「どうせ図書室だろ?声かけろよな」


「あ……ごめんなさい…」












ここ
最近の日課。


場所さえたいして知らなかった俺が

まさかの連日、図書室通い
















「あ、でも…友達は…?」


「ああ?ほっといていいし」




「え……あ…うん…」










まぁ…

図書室ったって、別に勉強目的じゃない

ただ…




「…あの…」


「ん?」

























「…付き合ってくれてありがとう…」














…別に

ただ…ヒマだっただけ







たぶん…





< 114 / 130 >

この作品をシェア

pagetop