想い綴り







『―…お前、何にも見えてねぇのな…―』










前に涼太が言った
あの言葉…




もし
その見えてない“何か”が

今、見てるこの風景と違ったとしたら


そしたら
俺は…


俺の中で
今以上、何がどんな風に変わっていくんだろう















「…あの…白城くん…?

ごめんなさい、今日…いつもより遅くなるみたい…だから先に…」








特等席と化した
一番奥のソファ席




目の前に見えるのは 時計を気にしながら
心配そうに
覗き込む唐沢の顔。






前なら

周りからいわれるのが嫌で、ただ近付いただけでも

相当な態度だった俺。


でも






「別にいい。読みたい本あるし」







自分でいうのも変だけど

だいぶ前より
トゲトゲしさは抜けたような気がする




まぁ…

ただでさえ腰が低い唐沢が怯えるからってのもあるけど

でも
なにより










「…ありがとう」










恥ずかしそうに
小さく呟くその声と

少しだけ赤くなる笑い顔が

なんて言うか…










……見てたくて












…って

やっぱコレって
俺、変だよな






やっぱ隣に置いときたいのは、

周りに自慢出来るような、そんな子なのに



なのに
自分から声かけたり

こうして図書室についてきてみたり…







もしかして
マジで俺………?









「いやいやいやいや、なに考えてんだ俺」








あるわけないじゃん

俺、理想高いし





でも
胸に広がる得体の知れないモヤモヤに説明つかなくて



本を開いたまま机に突っ伏する俺。






否定する自分

まさかって…
思う自分


あるはずない
そう思う自分





でも
とじた瞼の裏に映るのは

やっぱり…










唐沢の顔だった





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