想い綴り
今まで
俺が付き合ってきた女とはぜんぜん唐沢は違う
色気なんてなくて
華やかさなんて皆無で…
なのに
小さな仕草や
ためらいがちな言葉
それが妙に
胸に引っ掛かる
怖がられたくないとか
笑わないかなとか…
そんなこと
今まで誰にも思ったことねぇのに
考える自分がいる
コレって
なんだ…?
俺…
こんなの知らねぇ
なんで
唐沢にそんな風に感じるんだろう
唐沢にだけ……
ほんの少し体に感じる冷気。
「…ん……寒…」
一瞬、身を縮めたその時
フワッと暖かいぬくもりが俺を包んだ。
………ん
あったけぇ…
て……あれ?
「………ん…?」
変な違和感に目を開くと
そこに広がるのは
さっきまでいた学生の姿も、オルゴールの音色もなく
すでに照明も絞られた薄暗い館内。
「あ!?俺、寝てた…!?ってアイツ!?」
時計を見ると閉館時間のとっくに過ぎてる七時半。
周りを見渡すけど、亜衣の姿はどこにもなくて。
代わりにあるのは
イスに残された荷物と、俺の肩に掛けられてた
亜衣のパーカー。
…さっきのって…
いくら春だって言っても、やっぱり日が落ちると肌寒くて
なのに…。
「…つか、起こせばいいじゃん」
自分が風邪引いたらばかだろ。
なんて
そう思いながらも
ちょっと慌てて亜衣を探す俺。
「ひょっとして、もう出た?」
荷物抱えて図書館を出ようとした瞬間。
「…くしゅっ…」
上の階の方から小さな物音が聞こえた。