想い綴り
薄明かりの階段。
不意に頭に浮かぶ涼太の言葉。
なんとなく
なんとなくだけど
言いたかった事…
ほんの少しだけ
分かった気がした。
ゆっくりと登りきった先には、吹き抜けになってる一角。
その隅で静かに月を眺めてる唐沢の横顔に。
ほんの少しだけ胸の奥が音をたてた。
「…寒くねぇの?」
ゆっくり隣にしゃがみこむと
少し驚いたのか、一瞬肩を震わせる唐沢。
「…なにしてんの」
ひんやりする体にパーカーを羽織らせようとした、その時
「ご、ごめんなさい…あの…起こそうと思ったんだけど…あんまり気持ち良さそうだったから……」
慌てるように
何度も頭を下げた。
前なら
オドオドするコイツにイラついたりするんだろうけど
でも
頭に浮かぶのは
ホントにコイツは…
なんて
そんな言葉。
「…ホラ、帰るぞ?つか、手ぇ冷てぇし」
唐沢にパーカーを羽織らせて、冷たくなった手をしっかりと包んで。
チラッと見えた唐沢はちょっと驚いた顔してて。
まぁ…
普段の俺からは、
きっと想像出来ねぇんだろうな
でも
「…悪かったな」
ポソッと呟いて繋いだ手をポケットに突っ込む俺。
そんな俺の横目に映った唐沢は
今までで
一番
可愛い笑顔に見えた。