想い綴り











「今の話どう意味だ?」








笑い声ざわつく教室に

突然響いた
ドスのきいた重低音の声。






聞きなれないその声に誰もが振り返ってみると

そこに見えたのは











「……っ…先ぱ…」







出入口で
すでに眉間にしわ寄せて、見下ろしてる
亜衣の兄ちゃん…
あの先輩の姿があった。













「…今の話…俺にも詳しく聞かせてもらおうか」




「あっ……えっと、いやっ」

「あ、アレっすよっ今年の新入生ハズレばっかだって」








連中が一斉に
取り繕おうとごまかして笑うけど



たぶん
先輩の耳にはもう

会話の一部始終が筒抜けの様子






怒りに満ちた
鋭い視線はまっすぐに俺を捕らえてた。











「…淳也ぁ…お前、俺に言ったよな。アイツを泣かせないって

で?
これはなんだ?

勢いで寝た?
間違い?

しまいにゃ…
アイツから別れたいって言わせる?

なんなんだそれ」










なんか答えろ

そう怒りを押さえてる先輩の言葉。






その言葉に
俺は……


何も答えられるわけなかった










前はそうだった


見た目だけ重視で
亜衣がどういう奴かなんて

見ようともしないで


ただ
毛嫌いして
粗末に扱って…







それを
今さら

もうそうじゃないって口を開いても

そんなのただの言い訳にしかならない













「淳也…なんか言えやっ」










胸ぐら掴む先輩に思うのは

終わりの言葉と
情けない程の後悔










「…金輪際、亜衣の周りをうろつくんじゃねぇっ」



「…っ…」










頬にくらったのは

受け流しても流しきれない重い拳







床に転げながらも頭に浮かぶのは

こんな時でもやっぱり

あの小さな背中…













…亜衣

ごめんな








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