想い綴り
“友達の距離”
「寒くなってきたな~…」
夜の雑踏を一人で歩きながら呟いていた。
吐き出した白い息の向こうには
ビルの谷間に浮かぶ月。
あたしの歩調にあわせるように、ゆっくりとついてくる。
「…しかし、ちょっと買いすぎた…かな」
ずっしりと重いビニール袋の中には
ビール缶が12本。
いつものメンバーでの飲み会に呼ばれて
差し入れ代わりに買い出し中。
通いなれた街灯の下を歩くそんなあたし。
高崎 カンナ。
ついこの前、誕生日がきた21才の大学生。
「…こんだけあっても一瞬なんだよね」
飲み会って言っても、
たぶんあたしの口には一滴も入らない。
まあ、もともとお酒は得意じゃないし。
飲むより話してる方がずっと楽。
わざわざ酔っ払いの集まりに、絡まれに行くようなもんだけど。
でも
そんなあたしが毎回、顔出すのにも理由がある。
あたし…
ただ今、ちょっと不利な片思い中。